株主還元方針・配当方針とは?
多くの上場企業は、配当や自社株買いなどの手段で株主還元を実施しています。実際の配当額や予想配当、配当性向などは決算短信等の開示資料を見ればわかりますが、そういった配当額などを決める根拠となるのが株主還元方針や配当方針と呼ばれるものです。
一般的に、「株主還元方針」という場合には配当や自社株買いなどの株主還元策全般に関する方針が掲げられており、「配当方針」という場合には配当のみに関する方針が掲げられています。
なお、「株主還元方針」や「配当方針」に関するルールは特に定められていないので、企業によって「株主還元方針」あるいは「配当方針」を掲げていたり、違う呼称で株主還元に関する方針を掲げていたり、特に方針を定めていなかったりと、対応は様々です。
株主還元方針・配当方針の具体例
たとえば日本電信電話(9432)は、「株主還元に関する基本方針」を以下のように定めています。
株主還元の充実は、当社にとって最も重要な経営課題の1つであり、継続的な増配および機動的な自己株式取得の実施を基本的な考え方としております。
長期保有の株主の皆さまの資産形成にあたっても、魅力のある株式として引き続き選んでいただけるよう、今後も企業価値を高めるとともに株主還元の充実を図ってまいります。
日本電信電話は「株主還元方針」ではなく「株主還元に関する基本方針」という呼称を用いていますが、これが実質的に「株主還元方針」であるととらえて問題ないでしょう。
また、内容面では「継続的な増配」という文言が使われており、連続増配を意識している点が伝わってきます。実際に、日本電信電話は2012年3月期以降は連続増配を継続しています。「機動的な自己株式取得」という文言も同様で、ほぼ毎年、自社株買い(自己株式の取得)が実施されています。
続いてJT(2914)の「株主還元方針」を見てみましょう。
株主還元方針については、「4Sモデル」及びJT Group Purposeに基づく経営資源配分方針で掲げる「中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資を最優先」と「事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視」という観点から、以下のとおりとしています。
- 強固な財務基盤を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指す
- 資本市場における競争力のある水準として配当性向75%を目安(±5%程度の範囲内で判断)とする
- 自己株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資金需要等を踏まえて実施の是非を検討
JTも日本電信電話と同じように配当や自己株式の取得について触れられた株主還元方針となっていますが、特に配当については「配当性向75%を目安(±5%程度の範囲内で判断)」と具体的な数字が示されています。
このように、企業によっては配当性向やDOE、配当下限などについて具体的に目安や目標が掲げられている場合もあるのです。
配当性向などの目標や目安が示されていれば、業績予想や財務状況などから今後の年間配当額を予想することが可能となります。ただし、企業によっては株主還元方針や配当方針をコロコロと変更したり、方針から外れた株主還元が実施されていることもあるので、過去の方針・実績を精査することも大切です。
各社の株主還元方針・配当方針を比較するには
上場企業の配当利回りであれば、証券会社のウェブサイトや配当利回りのランキングなどを見ることで簡単に比較ができます。
一方で株主還元方針や配当方針については、各社の情報がまとまっているサイトがないので、比較したりランキングで上位の企業を見つけたりといったことが難しいです。
そこで当サイトでは、上場企業各社の株主還元方針や配当方針に関する情報を集約・整理して、比較しやすいような形にすることを目指しています。完成次第、こちらにもリンクを貼る予定です。
各社の株主還元方針や配当方針を比較して株主還元に積極的な企業を見つけ、投資成績の向上につなげていきましょう。